鳥の写真を撮っていて、以前「鳥居」について調べたことを思い出した。古いネタだがデータが残っていたので掲載する。
祖父が建築設計を生業としていた関係で、建築に関する和書が数冊遺されている。その1冊が「工匠技術の懐」。明治時代のベストセラーなのだろう、古書として珍しい本ではないようだ。
「くずし字解読辞典」を購入して解読を試みる。「この字がとても似ている」といった照合は、思い返すと図鑑から目当ての鳥や虫を探す作業によく似ている。なかなか楽しいものだった。本書冒頭の神明型の鳥居は、私でも(*印を除いて)なんとか判読した。
内宮鳥居の柱大さ下乃(したの)間(ま)中墨(なかすみ)にて壱寸壱分取(とり)上
にて壱分ほそく造りてころ飛(び)なし貫の幅はし良(ら)
大さなき八分厚さ三分奈里(なり)笠木能(の)大さ柱におな
じ長さ*柱の真ゝ越(を)三ツ丹(に)割一ツ分を柱乃真よ
里外へ出寿(す)なり笠木ぬきの間者(は)はしら壱本を挟(はさむ)
なり神明鳥居にはがく徒(づ)か亀腹等**なきもの
奈利(なり)礎等にはいたすべかくに土中より石を据る奈利
「奈利=なり」といった変体仮名は、1900年の小学校施行規則改正以後の教育を受けた者にはなじみが無いから苦労する。
文字がわかっても意味がよくわからない。そこで建築学会の図書館で江戸時代に書かれた有名な木割の書「匠明」の解説本を調べると、ほぼ同じ内容の記述が見つかった。その読み下し解説から以下のように理解することができる。
内宮鳥居の柱は、太さを下の間(根元部の柱芯々間距離)の一寸一分取(下の間の11%)とし、上端で一分(10%)細くする。柱に傾斜(転び)は設けない。貫は、せい八分(柱の8%)厚さ三分(同3%)とする。笠木の太さは柱と同じ。長さは柱芯々三等分長さを柱芯より外側に出す。笠木と貫の間は柱一本分の間隔を設ける。神明鳥居には額束(笠木貫間の短束)や亀腹(饅頭状の束石)などは無い。基礎部分は土中に礎石を置いて掘り立てにする。
1尺=10寸=100分の関係を使って百分率を表現している。鳥居のプロポーションは両側の柱スパンが決まると一意に決定する。なるほど木割は合理的なものだと感心する。
当時の私はけっこう暇だったらしく、添付の図面も参考にしてこんな絵を作っている。この比率で三次元モデルを作り、景観作成用の3Dソフトウェアに配置したもの。岩や樹木もパソコンが生成している。ソフトも良くできているが、この鳥居は確かに良いプロポーションだと思う。
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