庭で動かない蝶に気がついた。緩慢な翅の動きが不自然である。時折様子を見に行ったのだが、夕刻に近い頃に蝶は同じ場所で動かなくなっていた。
蝶の最期をこのように見届けたのは初めてだ。翅に損傷が認められないから、幸福な一生だったのではないかとか考える。
思いつきで、とてもきれいな翅だから標本にしたいと提案したら、家人から猛反対を受けた。虫の死骸を何処に飾るのかと言う。
なぜ標本を作りたいと考えたのかと再度自問すると、きれいだから以外にこれといった理由は思いつかない。子供じゃないから科学的好奇心であるはずはないし、捕獲したわけではないからトロフィーでもない。標本化を積極的に推進する有力な理由は見当たらないわけだが、積極的に否定する理由もないだろう。だが家人の反応には嫌悪が感じられる。昆虫の死骸を虫ピンに刺して額装する趣味は、昨今では異常とみなされる危険があるらしい。
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